第四章: 趣味の世界


   人生に彩りを添える美の世界

     生きている内にしておくべきこと、
     ・・・・それは、この世に生きた痕跡を残すこと?

     生きている内にしたいこと、
     ・・・それは、生きている歓びを精一杯噛み締めること。

     趣味を持つことは、生きている歓びを倍加させるものです。
     私の趣味の目的は、美しいもの達に出会うことです。


 
T、音楽とオ−ディオの趣味



 
1、音楽とオーディオの趣味


   音楽は、聴く人の心をほぐし、慰め、そして豊かにしてくれる。
   悲しいとき、うれしいとき、いつも身近に音楽があれば、音楽が自分を支えてくれたと
   思います。

   好きな音楽は、JAZZ、クラッシックから演歌までジャンルを問わず聴きます。

   オーディオの趣味は、音楽が好きでより良い音楽を聴きたいという
   気持ちから出発しています。
   「音楽を気持ち良く楽しみたい」
   そのために道具にこだわった・・・ということです。
   何故、道具にこだわったかといいますと、再生装置によって、音楽の表情が様々に変化する
   ことを知ったからです。

   そして、こだわって得たこと・・・
   それは、その道の本物に接して、圧倒的な質の違いを思い知らされたことだった。
   このことは、オーディオ以外の他の世界に於いても、云えること・・・
   オーディオの趣味は、私のその後の生き方にも強い影響を与えた。
   他の趣味の原点ともなりました。


 
2、生演奏と再生音楽の違い:

   20代の学生の頃、私は、上野の東京文化会館へヴィヴァルディ作曲の「四季」を聴きにいった。
   演奏は、勿論、イ・ムジチ合奏団。
   この会場に、マイクは、なかった。
   弦を擦る優しい響きに心が震えた。実に美しい弦楽四重奏です。
   オ−ディオの音質をチェックする感覚で音楽に聞き耳を立てた。
   生の音は、会場の空間ににじむように和んでいた。そして、硬くもなく柔らかでもない。
   静寂があり、激しい躍動もある。当り前の話ですが、1点の曇り・崩れも見つからない。
   スピ−カ−では、音と空間との境界が鮮明に分かれてしまうのです。
   生に近い音は出せても、再現はできないものとそのとき悟った。
   スピ−カ−は、再生音楽として聴くものであり、生演奏とは違うものと思わなければ
   なりません。
   だから、狭い場所でライブを聴くならば、マイクを通さないで、生の楽器の美しさを
   楽しみたいものです。
   いくら生演奏と云っても、一度、マイクとスピ−カ−を通してしまえば、それは、野外で聞く
   再生音楽になってしまうからです。



 
3、プロ用スピ−カ−との出会い:

   再生装置は、一方、生演奏でない、再生音楽として、別物として
   音楽を楽しむことができます。
   再生音楽の質を決める決定的な存在として、スピ−カ−に特に注意を
   払う必要があります。
   スピーカーは、コイルとコーン紙と永久磁石から出来ているひどく古典的な
   工業製品です。技術革新の著しい昨今にあって、基本的な構造は、ほとんど
   変わっていない。
   人の五感を頼りに作られる処が、逆に人を惹きつける要因かも知れません。




  
<ALTEC>


    今から40年ほど前に私は、始めてプロ用機材に
   出会った。東京は、秋葉原のヤマギワ電気で米国
   アルテックランシング社のA7という映画館のスク
   リ−ンの裏にセットされているグレ−の無愛想な
   ‘奴’である。右にその姿を示します。
   高さは、人の背丈ほどあります。
   Mclntoshのアンプでドライブされた音は、
   まるで音の洪水、滝に打たれたような爽快感があった。
   将にこれぞアメリカという圧倒的なパワ−・迫力でした。
   始めて聴いた人は、拒否反応を起こすかも知れない。
   私は、何度も秋葉原のヤマギワ通いをして、
   アルテックの音を聴きに行った。
   聴き込むほどにプロ機材の実力を見せつけられた。
   緻密で腰が強く、一点の曇りのない鮮明な音に本物
   の凄さを教えられた。音色は、暖色系です。
   ライブハウスの「かぶりつき」で聴く音である。

    

   アルテックA7システムの兄貴分に当る#815Aというスピーカーシステムがあります。
   38cmウーハーが2本入っています。このシステムで聴いた音は、今も忘れることが
   できません。
   ロックは、聴くというより、体で感じる。腹に響く引き締まった低音、緻密で充実した中域の音
   が頭の中の思考を吹き飛ばす。頭の中が真っ白になり、全身で音楽を受け止める感覚です。
   カミナリに打たれたような衝撃を全身で受ける感覚は、ライブハウスの直前で聴く音楽の潮
   そのものです。
   これは、体験しない限り、理解できないことと思います。
   アルテックは、このライブの熱気を自宅で再現してくれるのです。

   アメリカのスピ−カ−の良さは、明るくて朗々と鳴り、楽しいことである。
   この浮き浮きする楽しさは、アメリカ人の陽気さを反映するもので、アメリカ音楽の
   真骨頂を示すものです。
   内向的な日本人とは対照的な感性である。


  
<JBL>

   JBLという会社は、ALTECにいた技術者が60年前に創設したアメリカのスピ−カ−
   専門メ−カ−です。今や日本のオ−ディオファイルの間では、絶大な信頼を得ている。

   右に示すスピ−カ−は、06年に発表された
   JBLのフラグシップモデル。

   「プロジェクト・エベレスト」の名前を冠した
   文字通り世界最高峰のスピ−カ−です。
                                  
         


   フォルムの美しさと緻密で研ぎ澄まされた音は、他を寄せ付けない。

   JBLの音色は、昔は寒色系、今は、自然色になっている。
   精緻極まる美の世界を満喫できる。



  
<TANNOY>

   タンノイは、イギリスのスピ−カ−メ−カ−です。
   作家の故五味康祐氏が「西方の音」という著書の中でこのタンノイを絶賛した。
   スピ−カ−が、苦手とする弦楽器の音を最も良く再現するスピ−カ−として、
   クラッシク音楽ファンの間から絶大なる信頼を得、神格化されている。
   本国では、この大型システムはもう売れなくなったと聞いていますが、今や日本
   向けモデルとして、生き続けている。今や古いタンノイを支え続けているのは、
   我ら日本人である。

   このスピ−カ−は、ロ−ルスロイスを作った国だからこそ作れたスピ−カ−
   とも云える。
   その音は、日本人の感性に近い、陰影に富んだ、気品溢れる音である。
   旧タイプのTANNOYは、聴き込めば聞き込むほど、人を引き込む魔力を
   持っていた。私も一時このスピーカーに魂を奪われた経験をしている。

   気品とは何かを教えてくれるスピーカーである。
   音色は、暖色系。

   ヨ−ロッパのスピ−カ−の特徴は、
   憂いを表現できることにある。
   悲しみを表現できるスピ−カ−は、
   魂に触れる音でもある。
                     


   ファンクラブ ⇒ TANNOYファンクラブ               Westminster ROYAL/SE


   <作家の故五味康祐氏が慈しんできた名機タンノイ・オートグラフ> 

   練馬区役所に故五味康祐氏の愛機が保存されているそうです。
   なんでも、平成19年に一人娘の方が亡くなり、遺品を区役所が整理・保存することに
   なったようです。
   そして、没後30年を記念し、平成22年9月5日から練馬区石神井公園ふるさと文化会館
   で遺品が公開されるようです。
   是非、機会あれば達人の名機を訪ねてみて下さい。




  
<年代により音色が異なる>

   上の著名スピ−カ−メ−カ−の音も、実は年代と共に音の傾向に違いがあり、必ず
   しもブランドが万全という訳ではない。
   例えば、ALTECの場合、Western Electric社の設計の流れを汲む古いタイプの音の方
   が渋くて良い。民生用に新しく設計された製品は、高音域の音色が甘ったるく色着け
   されて感心しない。
   また、JBLの場合、古い年代の製品は、高音域に独特のキツさがあったが、新年代の
   製品は、その欠点が克服され実に素直な自然な感じに修正された。
   一方、TANNOYの音は、古い年代には、原設計者の思想が色濃く残されており、未だ
   に根強いファンの支持を得ている。新設計の製品は、よりナチュナルな方向を向き
   新たなファンの支持を獲得している。
   要するに年代により同じブランドでも音の傾向が違うので、年代を特定して聴く必要が
   あります。


 
4、再生装置の選び方:

   物には、必ず作った人の個性が宿っています。 
   工業製品であるオ−ディオ再生装置も例外なく、生産国の精神を宿しています。

   アメリカ音楽には、アメリカ製の再生装置が適し、ヨ−ロッパ音楽を聴くときは、欧州製
   の再生装置が適しています。
   音楽は、その作られた国の再生装置で聴くのが最もその心が伝わります。

   再生装置は、音の入口と出口を良くすると効率の良い再生音を聴くことができます。
   再生音の質は、特に音の出口のスピ−カ−の質で決定的になりますので、特に注意
   が必要です。スピ−カ−サイズは、大きいほど余裕のある音が出ますので、可能ならば
   15インチサイズのウ−ファ−を持った大型サイズのスピーカーがお奨めです。
   折角の大型スピーカ−ですから、家族の居ないときに大音量で楽しみましょう。
   ・・・・近所迷惑にならない範囲内で

   そして、良い再生装置として云えることは、「・・・ながらをさせてくれない装置」といえ
   るのではないでしょうか?
   本や新聞を読みながら、気楽に聞き流すことが出来ない・・・そういった装置です。
   新聞を読んでいても文字が頭に入らない、音楽に気持ちが引き寄せられてしまって・・・
   最後には、新聞を放り出して聴き入ってしまう自分がいる。
   そいう再生装置が良いと思います。



 
5、私が愛用しているオーディオ装置:


       スピ−カ−: JBL#L220
       アンプ: Mclntosh #MA6800
       CDプレ−ヤ:  PHILIPS#LHH600B
              


     再生装置としては、最新のものではありませんが、さりとて、音に何の不満もないので、
     満足して聞いている。


   ・我が家のメインスピ−カ−は、JBL#L220です。ト−ルボ−イスタイルの3Way
    スピ−カ−で、発売してからもう30年近く経っている。その音は、ワイドレンジで
    クセがなく、精緻な画のごとくです。生涯の伴侶です。
    このスピーカーの唯一の泣所は、ウーハ−のコーン紙のロールエッジの耐久性にあります。
    モルトプレーン(平たく云えばスポンジ)で出来ているため、10年を過ぎるとボロボロに
    なる。故に、コーン紙の張替えをやらなければならない。一番下のパッシブラジエーターは、
    自分で鹿皮を切って張替えしたものです。

    サブスピ−カ−は、イギリスのTANNOY社製HPD385ユニットを国産Boxに入れて
    使っている。

    次に、ALTEC#755Eは、映画を観るときのスピーカーとして、薄型ディスプレ−の両サイドに
    置いている。50年前の製品ですが、Western Electric社の設計の流れを汲み、頑丈そのもの。

    ALTECだから出せる実在感のある音は、臨場感があり
    映画を倍楽しむことができます。 
    音ヌケが良く、リアリティがあり、映画を観るとき
    の必需品です。将に映画館そのものの音が
    楽しめます。

    また、録音の良し悪しがハッキリ出るスピーカー
    なので、このスピーカーの前では、騙しが通じない。
          

    2023年暮れに偶然、ネットオークションでALTEC 3000 H 高音ドライバーユニットを見つけました。
    液晶モニターの外部スピーカーにALTEC 755E を設置していますが、このフルレンジスピーカーの
    周波数特性は、高域がMax 15,000 Hzになっていて、以前から高域の不足を感じていました。
    ALTEC に3000 H ツイータがあることは知っていましたが、現品を見つけることができませんでした。
    処が、昨今のネット環境が流通を飛躍的に発展させ、いとも簡単に貴重品を見つけることができました。
    専用のN3000E ネットワークも見つかり晴れて755E + 3000Hのシステムを完成できることになりました。
    液晶モニターに付属しているスピーカーの音は、残念ながら貧弱な音しか出ていませんでしたので、
    高精細な画面と不釣り合いになっていました、
    早速、モニターの外部出力にアンプとALTECのシステムを配線して音出しを試みる。
    ALTEC 3000Hドライバーの評価は、バラバラなので、心配していましたが、稀有に終わった。
    その音は、緻密で繊細な素晴らしいものだった。特に血の気を感じさせる人声の美しさは、ALTECの
    伝統を彷彿とさせるものだった。
    評価が別れる理由は、このスピーカーシステムは、録音の良し悪しが明確に出るので、音源の質が悪いと
    酷い音を出すから誤解させるのではないかと思います。
    最新の良い音源で再生音を聞き分けて貰いたいと思います。

      
     ALTEC 755E + 3000 H + N3000E システム


    エンブレムは、コンサ−トマスタ−のデザインが
    ついた古いタイプのものがついています。

         



    <音ヌケが良い>
    スピーカーの前後の音の広がりが良く分ること。スピーカーの後方に音が抜けていて、通っていること。



                

               ALTEC 755E 20cm シングルコーン
                    <愛称・パンケーキ>

   ・アンプは、Mclntosh社のプリメインアンプ#MA6800です。
    ブル−のパワ−メ−タ−と黒いガラスパネルは、永年、憧れていたもの。
    マッキントッシュのアンプは、ゴ−ジャスでリッチな雰囲気がある。
    音は、豊かで暖色系。


      




   ・CDプレヤーは、フィリップスの#LHH600Bを使っています。
    往年の銘機、記念碑的モデルのLHH700の後継機です。
    情感豊かで瑞々しい音色は、聴き手を捉えて離さない魅力を持っています。
    このしっとりとした音楽的表現力の高さは、欧州製ゆえんの血の成せる技ではないでしょうか。

    CD元年のときには、NECのCD803を使っていました。初めてデジタルフィルターを
    搭載した機器で、周波数レンジの広い、鮮明で生々しい再生音に衝撃を受けたものです。
    他機とは圧倒的な音質の良さにも係らず、メカに問題があり、度々、再生エラーを起しました。
    そして、最後には動かなくなりました。しかし、それでも忘れることのできない再生音でした。

        
                NEC CD803



   ・ヘッドホ−ン: BEYER DT440 ドイツ製 
    ドイツのBEYER社ヘッドホ−ンは、実にクセのないさわやかな音色をしている。
    30年前の製品でインピーダンス4Ωという能率の低さなのですが、音の良さは捨て難く、
    未だに大切に使っている。

   ・デジタル音楽プレ−ヤ用のヘッドホ−ンは、KOSSのPortaProを使っています。
    通勤時のお供ですが、なかなかの優れものです。
    再生レンジが広く、ヌケが良いので、粋の良いサウンドに驚かされる。
    プロのサウンドエンジニアやミュージシャンの評価が高く、1988年の発売から、
    20年以上になる超ロングセラーというのも、肯ける。



                           





 6、最近のポータブルデジタルオーディオの音質について: 

    デジタル音楽プレ−ヤ(MP3)なるものが、アメリカのパソコン屋さんから発売されて、
    アッという間に世界標準になってしまいました。
    通勤電車のサラリーマンやOLの必須アイテムで皆さん耳にイヤーホンを差込んで
    何やら聴いていらっしゃる。
    私も時流に乗ってS社のプレーヤーでCDからダウンロードした曲を聴いていた
    のですが、始めに何やら違和感を覚えた記憶がある。
    しかし、その内、再生音に慣れてきて、感じなくなった。
    処が、最近になって、古いMDプレーヤーを引っ張り出して、音を聴いてみて、ビックリ
    してしまいました。高域の伸び、音のヌケ、レンジの広さ、などMP3プレーヤーより、
    遥かに素晴らしい再生音が出ていたのです。
    古いMDプレーヤーの音を聴いた後、MP3プレーヤーの音を聴く気になれなくなった。
    素人のパソコン屋さんが作った軽薄な音楽は、仕方ないとしても、ウォークマンを発明
    した専門メーカーの其の社まで追随することはないのではないでしょうか?
    専門メーカーの意地を見せた新規格のMP3プレーヤーを期待したい。
    無理でしょうか?






 7、東京インターナショナルオーディオショー: 

   
7-1: 2010年東京インターナショナルオーディオショー見聞録

    ハイエンドオーディオ機器のショーが今年も11/5〜11/7にかけて東京フォーラムで
    開催されました。
    学生時代から通っているショーで通算すれば、40年以上の歴史があります。
    11/6当日は、秋晴れの絶好の行楽日和。
    何もこのような天気に部屋に閉じ籠って音楽を聴くことはないのですが、
    何故か集まった人種は、殆ど中年から初老の男性ばかり・・・
    会場に来ていた評論家が、悔し紛れに「多寡がモミジ・・・枯れかかった葉っぱじゃないか」
    と野暮の上塗りをしていたのは、いただけなかった。
    それは、さておき、4年ぶりに参加した印象を報告したい。

    先ずは、エソテリック鰍フブースで英国TANNOY社のスピーカーを聴く。

         

   上の写真の左がKingdom Royal 右がCanterbury SE

   発売されて3か月目のKingdom Royal の音を聴いた。
   エージングが済んでいなかったのか、又は、ユニットを交換したと云っていたので、
   調整不足なのか理由は分らないが、再生音は、良くなかった。
   やや乾いた中域にザラツキ感のある音で、本来のTANNOYの持ち味がどこかに行って
   しまっていた。


   次は、潟GレクトリのブースでMAGICOのスピーカーを試聴した。

       

   上の写真の左が新製品Q5スピーカー、右の写真の人物がその設計者

   MAGICOのスピーカーは、総メタル製で完全防振構造の総重量 170kgのモンスター。
   完全防振構造にするためにFEM構造解析まで駆使したそうです。
   楽器などは、箱の共鳴を音色として利用していますし、一部のスピーカーメーカーでは、積極的
   に箱鳴りを利用する手法をとっています。MAGICOは、彼らと対極にある設計思想です。
   箱をガチガチに防振して良い音がするのか疑問です。
   価格は、ペアーで700万円だそうです・・・・

   これだけの商品を作った本人が銀座のすし屋で2万円の勘定に驚いていたのが、可笑しかった。
   さて、肝心の再生音ですが、ストレートで前に出てくる良く鳴るスピーカーです。
   抜けも良く、明るいキャラクターの印象は悪くなかった。

   次に、潟キムのブースでドイツのELACのスピーカーを聴こうと思いましたが、残念ながら
   小部屋に沢山の人が押しかけていて、部屋に入れませんでした。



   スピーカーは、不思議な工業製品です。
   最新の技術を駆使しているからと云って、良い音が出るとは、限らない。
   何年も前に作られた製品が優れていることがよくあります。
   今回の新製品を試聴してそれを強く感じました。

   私が、ショーに通う目的は、最新の機器の情報を得ることと別に目的があります。
   各ブースでは、新製品のプレゼンテーションがありますが、その解説にオーディオ
   評論家が製品の特徴を説明するためにデモCDを聴かせてくれます。
   実は、この評価用に選んだ曲を聴くために行くのです。
   秀逸な演奏や録音の良いものなど新しい発見があるからです。

   優れた曲や演奏に巡り会う機会は、皆さんは、どのようにして掴んでいるのでしょうか?
   昔は、FM局の放送がソース源でしたが、今は、FMを聴く時間がありません。
   もうその機会がありません。
   レコード店の試聴コーナーでチョイ聴きして買って帰ると大半が後でガッカリする結果に
   なります。
   日頃の悩みは、良い演奏家や曲にどのようにして巡り会うか?  ・・・・です。
   オーディオショーのプレゼンテーションは、恰好の情報源になるのです。



  7−2:  2012年東京インターナショナルオーディオショー

   2012.年の東京インターナショナルオーディオショーは、11/2〜11/4にかけて東京
   ファーラムで開催されました。
   今年は、JBLの最高峰スピーカーのProject EVEREST DD66000が6年ぶりにバージョン
   アップされたと聞きましたので、聴きに行ってきました。
   新製品は、DD67000とDD65000の2機種用意されていました。
   DD66000の兄貴分と弟の関係でしょうか?

     
       <Project EVEREST DD67000>                   <Project EVEREST DD65000>


  外観上は、殆ど大きな違いは有りませんが、どう変わったのでしょうか?
  当日の説明によれば、
  DD67000の中域と高域を担うコンプレッションドライバーは、DD66000と同じピュア・ベリリウム・ダイアフラム
  で出来ていて変更ありませんが、低域の38cmウーファーのコーン紙とロールエッジが改良されたようです。
  一方のDD65000の方は、中域と高域のコンプレッションドライバーの材質がマグネシウムダイアフラムに変更
  されています。
  DD67000とDD65000の違いは、中域と高域のコンプレッションドライバーの材質の違いにありました。

  試聴した感想ですが、DD67000のの音には、只々、圧倒されて、もう何も云えませんでした。
  圧倒的な情報量の多さとスピード感は、クールで知的な世界最高峰の音場を展開していました。

  一方のDD65000のマグネシウムダイアフラムの音は、少し円やかで聴きやすくなった感じがします。
  しかし、DD67000の音を聴いた後での感想です。単独でDD65000だけを聴けば、十分満足するでしょうね。


  因みにDD67000は、300万円/本、DD65000は、240万円/本の価格がします。
  アンプは、マークレビンソンのプリとパワーアンプが使われていましたので、1千万円を超える音響機器
  になります。
  ふーと思わず溜息が出ます。




     
     <マークレビンソンのプリとパワーアンプ>        <TANNOY Kingdom Royal > <Agantgarde>



  続いて、エソテリック社のブースで私の好きなタンノイのスピーカーを試聴しました。
  エソテリック社の部屋に入るとバカでかいドイツのホーンスピーカー「アバンギャルド」が眼に入った。。
  タンノイは、6年前に見たのと同じKingdom Royal が正面に鎮座していました。
  音の印象は、低音が出過ぎの中域が引っ込んだドンシャリ形の音。箱鳴りもしていて、スタジオモニター
  の銘に、大いに疑問を感じた。
  Kingdom Royal の音は、その後、スタジオモニター級の音に改善されています。さすがTANNOYです。
  下の写真の右側の人物は、タンノイ社の副社長ですが、はるばるイギリスから新製品のPRの挨拶に
  来られていました。


           
               <タンノイ副社長の挨拶>



  続いて登場したのが、下の写真の新製品 DC10A・・・・(2013年3月頃に発売になる)
  同社のKensington/SEというモデルをモダンにリニューアルしたような外観です。
  装着されている25cmデュアルコンセントリック形スピーカーは、往年の銘器「タンノイVLZ」の改良形で
  しょうか?
  試聴した感想は、断然、Kingdom Royal より、まとまりがよく、左右のスピーカー間に演奏者の各楽器が
  きれいに並んで聴こえる。所謂、定位がよく、繊細な高域が実に美しい。
  25cmとは思えないほど音量もあり、これは注目に値する製品です。
  但し、JBLなどと比較すれば、情報量は少ないかも知れませんが、
  ・・・しかし、そのようなことを気にさせない音楽性の高さを持っています。






     
         <TANNY DC10Aスピーカー>                 <25cmデュアルコンセントリックSP>

   BOXの側面は、膨らんだ曲面になっています。
   予価\80万円/本だそうです。



 Music by European Jazz Trio <Scarborough Fair>